浜田真理子オフィシャルブログ「本日のハマダマリコ的こころII」

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コンサート情報
■浜田真理子 TOWN GIRL BLUE
2017/4/13(木)
Billboard Live TOKYO (東京都)
[出演]
浜田真理子/Mariko Hamada(Vocals,Piano)
服部正美/Hattori Masami(Drums,Percussions)
加瀬達/Toru Kase(Bass)
檜山学/Manabu Hiyama(Accordion)
[一般発売]
2017/2/21(火)10:00〜

■うたの女子会
浜田真理子〜畠山美由紀〜市川愛コンサート
2017/6/4(日)
高松オリーブホール (香川県)
[一般発売]
2017/3/1(水)10:00〜

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けんやのこと−その1&その2[ハマダマリコ的こころ]

その1
今から何年か前のわたしはちょっとひどかった。それは、今年5年目に入っている5年日記のどこにも書かれていないから、少なくとも5年より前なんだろう。そのひどい状態はそんなに長くはつづかなかったけれど、そのときの辛さは今でも忘れない。

どうひどかったって、とにかく心がすさんでいたのだ。何をしても空しくて悲しくて孤独で、毎日息を吐いて吸って吐いて吸ってただ生きているという感じだった。朝、古本屋の仕事に行って、夜クラブでピアノ弾きをして、その帰りに行き付けの何件かの店でけんやと飲んで朝方に帰って、というような生活だった。半年くらいだったけど、ずっとそんなの続けてたらどうなっていただろう。

けんやはそのころのわたしととても仲がよかった。彼氏だったわけではなく、ただいつもいっしょに酒を飲んでつるむ友達だった。

「おまえだいじょうぶか?」会うとかならず、けんやはそうたずねた。いつも同じだった。「だいじょうぶにきまってるだろ」というのが、わたしの言葉だった。ぜんぜんだいじょうぶじゃなかった、あの時わたしは。

けんやは優しい男だった。酒屋さんに勤めていて、わたしはクラブでの仕事の前にいつもけんやの酒屋に寄って、けんやのいるレジのところで「立ちきゅう」の人みたいにぐだぐだしゃべってから、仕事に出かけた。映画の「スモーク」みたいに。

世紀の大失恋(はは、)をしてちょっとおかしくなってたわたしはテンポラリーでイージーな恋をしては傷ついていて、けんやはいつもそんなわたしのださださな話を聞いてくれた。そして、いつも最後に「だめだめな女だな〜おまえは〜」と言うのだった。

けんやとはビーハイブやらフィラメンツやらポエムでぐじゃぐじゃ飲んだ。わたしはあんまり飲めない体質だけど、でも飲んでいた。待ち合わせなんてしたことはなかったけど、たいていどれかの店にけんやはいた。

その2
けんやはいつもわたしを「ハマダマリコ」ってフルネームで、そして多分、カタカナで呼んだ。「俺は『ハマダマリコ』のうた好きだなー。あの『のこされし者のうた』って最高だなぁ。泣けるよなぁ。『ハマダマリコ』ってイタコだよなぁ」とか、なんかのオンザロックを飲みながら言った。

「ハマダマリコって、ジャニス・ジョプリンみたいだなぁ」と、けんやはよくわたしに言った。
「あひゃひゃひゃひゃ、それって誉めてんの、けなしてんの?ひゃひゃひゃひゃ」とわたしは笑った。言いたい事はわかっていた。誉めてもけなしてもいないこともわかっていた。

けんやは、わたしには「だめだめだなぁ〜」とか言って笑うくせに、自分だってかなりだめだめな男だった。仕事はてんてんとして長続きしないし、昔付き合っていた女のパンツまで洗ってやってたんだぜぇ、とか自慢するようなおばかな野郎だった。

わたしたちは、カウンターで肩を並べては、ろれつの回らない舌で、本の話や音楽の話をした。村上春樹やケルアックやギンズバーグとか、ティム・オブライエンとかジャクソン・ブラウンとかの話をした。いつも同じの単なるBAR TALKだった。

けんやはいつも「作家になる」と言っていた。でも、書いたものを読んだことはない。それに、書いていた形跡もない気がする。いつか、一度だけ、これから書くつもりのストーリィのあらすじを話してくれたことがある。

女の双子が出てくる話で、それで、その子たちは、色盲なのだった。わたしが「女の子の色盲って、いないんじゃなかったっけ?染色体の関係で」って言うと、けんやは「まじかよーおまえ頭いいなぁ」と言った。わたしは調子にのって、「それに、双子って、あんた、まるで、村上春樹のマネじゃん」と言うとけんやはぶすっと黙ってしまった。そして少しの間、わたしたちは黙って飲んだ。

けんやは優しい男だった。かわいそうなやつを見ると放っておけないやつだった。付き合いもいいやつだったけど、なぜか、いっしょに飲んでいても帰る時は絶対にわたしより先だった。

そろそろお開きかなぁという雰囲気になりそうになると、すかさず、「じゃ、俺帰るから」と席を立つのだった。それがあんまり急なので、わたしは何度置いていかれたかわからない。付き合いのいいけんやらしくない行動だった。そのうち、置いてきぼりのさみしさを味わうたび「けんやはもしかしてこの気持ちが嫌なのかなぁ」と漠然と思った。

つづく。



コメント

男と女を意識せずに・・・人間同士で、互いに男っぽく?MARIKOみたいな「いい女」と付き合えたらいいだろうな〜〜って思います。MARIKO嬢から「けんや」くんの話を聞いてるとなんか、いいな〜〜って思います。愛と恋とかドロドロしたものも全部まとめて人間自身、裸一貫で付き合いたいなって・・・。
やっぱ歳をとると、性別が怪しくなって、男も女もオカマもゲイもぜ〜〜〜んぶ、独りの人として今まで生きてきた年輪を背負って、なんか全部素敵に見えてきますよね。そう思うの・・俺だけかなあ?
やまちゃん
(2005-11-17 22:38)
あー 懐かしい 
前にこれを読んだときも
真理子さんは本を書ける人だと思ったんだわ・・
あじさい
(2005-11-17 22:53)
ほんとに懐かしいですね(笑)!>『まりこの部屋』
NON
(2005-11-17 23:29)
笑ったわ〜。楽しませてくれてありがとう。

真理ちゃんて正直だね〜。
でもそのフツーに生きてないところがいいんだよ。
Sanae
(2005-11-18 12:48)
おにいちゃん(ケンヤ)はいつでも、だれにでも「愛」のある接し方をしてくれる。おにいちゃんのネットワークの広さにも驚かされる。そろそろ会いに行くべかな。
Ma-
(2005-11-20 02:59)

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